オペラ 「ナクソス島のアリアドネ」 in 名古屋
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作品 | オペラ「ナクソス島のアリアドネ」 (Ariadne auf Naxos) |
作詞 | フーゴー・フォン・ホフマンスタール (Hugo von Hoffmannstal) |
作曲 | リヒャルト・シュトラウス (Richard Strauss) |
公演形態 | 原語上演(ドイツ語)・字幕つき |
日 時 | 平成18年11月(4回公演) 17日(金) 18:30 開演 18日(土) 14:00, 18:30 開演 19日(日) 14:00 開演 |
会 場 |
名古屋市芸術創造センターホール |
入場料金 | 7,500円、6,000円、学生券3,500円 (友の会会員は10%引) |
お問い合わせ | 名古屋尾張地域市民オペラ振興会 ariadne-in-nagoya@hotmail.co.jp |
Intendant | 公演総監督 | 山田信芳 (NCO理事長) |
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Musikalische Leitung | 指揮 | Christian Hammer (ドイツ・ロストック国民劇場 第一指揮者) |
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Inszenierung | 演出 | 岩田達宗 (新国立劇場・びわこホール・ 日生劇場ほか演出) |
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Orchester | 管弦楽 | 名古屋二期会管弦楽団 | ||
17(金)・ 18(土・夜) |
18(土・昼)・ 19(日) |
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Der Haushofmeister | 語り | 執事長 | Frank Schaefer | Frank Schaefer |
Ein Musiklehrer | Bar | 音楽教師 | 田辺とおる | 滝沢 博(18昼) 田辺とおる(19昼) |
Der Komponist | Ms | 作曲家 | 相可佐代子 | 近藤にれ |
Der Tenor(Bacchus) | Ten | テノール歌手(バッカス) | 笛田博昭 | 加藤利幸 |
Ein Offizier | Bar | 将校 | 中野嘉章 | 中野嘉章 |
Ein Tanzmeister | Ten | 舞踏教師 | 坂本 肇 | 永井秀司 |
Ein Prueckenmacher | Bar | かつら職人 | Konstantin Walderdorff | 小野隆司 |
Ein Lakai | Bass | 従僕 | 小柴和浩 | 伊藤貴之 |
Zerbinetta | Sop | ツェルビネッタ | 飯田みち代 | 山田祐規子 |
Primadonna(Ariadne) | Sop | プリマドンナ(アリアドネ) | 山本佳代 | 児玉弘美 |
Harlekin | Bar | ハルレキン | Konstantin Walderdorff | 小野隆司 |
Scaramuccio | Ten | スカラムッチョ | 中野嘉章 | 中野嘉章 |
Truffaldin | Bass | トルッファルディン | 小柴和浩 | 伊藤貴之 |
Brighella | Ten | ブリゲッラ | 坂本 肇 | 永井秀司 |
Najade | Sop | ナヤーデ | 原田美織 | 山中敦子 |
Dryade | Alt | ドリャーデ | 多和田樹里 | 梅澤市樹 |
Echo | Sop | エーヒョ | 本田美香 | 山本 馨 |
キャスト全員の顔写真はこちら
主催 | 名古屋市民芸術祭2006実行委員会 (名古屋市・名古屋市文化振興事業団) |
公演制作 | NPO法人・名古屋尾張地域市民オペラ振興会 (NCO) |
協力 | ブラザー工業株式会社 ロストック国民劇場(ドイツ) |
協賛 | JR東海 グローバル・ビューティ 渇ヘ合楽器製作所 カレーハウスCoCo壱番屋 |
後援 | ドイツ政府観光局・ (財)東京二期会・名古屋日独協会 日本リヒャルトシュトラウス協会・ 大阪・神戸ドイツ総領事館 京都ドイツ文化センター |
支援企業 | 潟Tッポロビール東海北陸本部・名古屋ビール園浩養園・ 中西電機工業梶E丸真精機(株)・ease -body&foot- ・ アートアシストアズ |
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11月8日付・中日新聞難曲「ナクソス島のアリアドネ」
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・・・・・・・・・・・ R.シュトラウスの歌劇のうち最も上演が難しいとされる「ナクソス島のアリアドネ」が17日から3日間、名古屋・新栄の名古屋市芸術創造センターで4回連続上演される。新設の非営利活動法人(NPO)が制作を担当。同市民芸術祭主催事業として公演助成を受ける一方、企業の協賛や支援を取り付け、約1700万円の制作費を調達した。地元勢を中心とする出演陣が期待に応え、名古屋制作初演の難曲の高いハードルをクリアできるか・・・・。 ・・・・・・・・・・・・ 制作を手掛けるのはNPOの名古屋尾張地域市民オペラ振興会。会の理事長で公演総監督の山田信芳は、高校音楽教諭の傍らオペラ・ミュージカルの副指揮の経験が長く、名古屋周辺のアマチュア合唱団も指導している。「名古屋にはない市民オペラを」と、公演の受け皿となる同かいを今春設立した。 オペラ団体の枠を超え、フリーで活動するソリストを含め、出演者を指名やオーディションで選抜。指揮者にドイツのロストック国民劇場第一指揮者のクリスティアン・ハンマー、演出に気鋭の岩田達宗という実力派を迎え、ドイツ語原語上演で異色のオペラに挑む。 資金難などから地方オペラが苦境の中、企画性に富んだ計画で企業からの支援・協賛を取り付けることにも成功。山田は「経験ある指揮者を招き、音楽の稽古に200時間以上はかけた。公演を成功させ、次につなげたい」と話した。 「ナクソス−」は二場構成。一場ではオペラ開演までのすったもんだが描かれ、二場ではどたばたの手直しが意外な効果を上げて劇中劇のオペラが成功するという、コミカルな内容。文豪ホフマンスタールの台本で1912年初演。大編成の管弦楽を用いることが多いシュトラウスとしては異色の36人編成のオーケストラによる「室内オペラ」だ。演奏は名古屋二期会オペラ管弦楽団。 岩田演出では、観客に現実味を味わってもらおうと、18世紀前半のウィーンの大富豪の邸宅の設定を現代の名古屋の劇場に移し替える。 歌手は難役ぞろい。女喜劇役者ツェルビネッタのアリア「偉大なる女王様」は、高音域で玉を転がすような美声で歌い出すコロラトゥーラ・ソプラノの難曲中の難曲。ダブルキャストで、国際的に活躍する名古屋出身の飯田みち代と、静岡で活動する山田祐規子が挑戦する。 格調高い透明な声質を要求されるアリアドネは山本佳代と児玉弘美の地元勢。注目の名古屋在住の若手テノール笛田博昭は、これも超絶の歌唱を求められる難役バッカスに。このほか、ドイツの歌劇場経験が豊富なバリトン田辺とおるらも出演する。 このうち児玉は「ドイツオペラの全幕上演はまれ。自分のレパートリーを広げたくて参加した。アイディアあふれる演出で、インスピレーションが深まる」と話した。 (長谷義隆記者) |
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批評記事 |
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11月28日付・日本経済新聞文化往来
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「中京圏初のドイツオペラ地元制作公演」と銘打った「ナクソス島のアリアドネ」(R.シュトラウス作曲)の公演が17−19日、名古屋市芸術創造センターホールで行われた。これまで愛知県芸術劇場などがイタリア歌劇を自主制作したことはあったが、ドイツ歌劇を一から独自に立ち上げたのは今回が初めてだとしている。 主催は名古屋市などの市民芸術祭2006実行委員会、制作は指揮者の山田信芳が理事長を務めるNPO(非営利組織)の名古屋尾張地域市民オペラ振興会が担い、けいこ場を提供したブラザー工業はじめ地元企業が協賛した。ドイツのロストック国民劇場が協力し、同劇場第一指揮者のクリスティアン・ハンマーを指導と本番指揮に派遣。演出には気鋭の岩田達宗が招かれた。 岩田演出は序劇を名古屋の舞台裏と設定。難解なホフマンスタール台本の会話劇の世界と日本の観客との距離を一気に縮めた。後半、悲劇と喜劇が交互にからむ劇中劇の視覚は自然で美しく、小ぶりな会場の特性も十分生かした。ハンマーは練達の劇場指揮者と言え、小編成の楽団から引き締まった響きを引き出した。歌手ではツェルビネッタの飯田みち代、音楽教師の田辺とおるがドイツ語歌唱と演技の巧みさで光っていた。 (池田卓夫記者) |
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公演報告 | |
日本リヒャルト・シュトラウス協会の会報67号 に寄稿した報告記事(田辺とおる執筆) |
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名古屋の「ナクソス島のアリアドネ」公演報告 田辺とおる |
前号の会報にチラシを同封させて頂いた11月17−19日の公演が無事終了した。 「名古屋市民芸術祭の主催公演に採用されて市の助成を取り付けたから、アリアドネをやりましょう。制作にも協力してください」と、名古屋のオペラ活動に長く関わっている旧知の指揮者山田信芳に持ちかけられて企画が始まったのが一年前。「名古屋尾張市民オペラ」というNPOを立ち上げた。中京地区初の「ドイツオペラ地元制作・字幕付き原語上演」になるそうだ。またR.シュトラウスのオペラ公演は、愛知県立芸術劇場の?落としにバイエルン国立歌劇場が市川猿之助演出「影のない女」で客演した時まで遡る。 「初の試み」にはそそられる。地元の歌手にシュトラウスオペラの魅力を満喫してもらって今後の発展に繋げたいと案を練り、ドイツの地方劇場と提携した。日本通で堺市民オペラなどでも演出経験のあるシュテフェン・ピオンテック総監督が率いる、北ドイツの港町ロストックの国民劇場が協力してくれることになり、第一指揮者クリスティアン・ハンマーの来日が決まった。僕が北ハルツ劇場専属歌手だった頃の音楽監督で、日本のアリアドネを一緒に作るという嬉しい再会。 これは心強い。彼は丁寧な歌手指導と明解なオーケストラトレーニングに信頼厚いし、サロメと薔薇の騎士で共演した経験を思い出すと、シュトラウスの「濃い音楽」に血が騒ぐ男だ。案の定、稽古で歌手の誰かが欠席すると嬉々としてテノールの声で表情豊かに歌いながら指揮するなど、ドイツオペラを初めて歌う名古屋の歌手と初めて弾くオケを、シュトラウスの世界にグングン引っ張っていってくれた。そればかりか執事長(セリフ役)のドイツ人が降板したピンチを救ってラジオドラマ宜しく、役者顔負けの語り口で録音。天井から聞こえる執事長の声に我々は一喜一憂のリアクションをすることになった。 キャストは地元との混成にした。ウィーンの飯田みち代がツェルビネッタの大アリアで拍手鳴り止まぬ喝采。ウィーンからは他にもヴァルダードルフ(ハルレキン)、パリのシャトレ劇場で作曲家役のアンダーを勤めた相可佐代子、僕はベルリンから音楽教師役で参加した。地元からは日伊コンコルソに入賞した期待の新星笛田博昭が難役バッカスに出演。二日目のキャストでは新進気鋭の地元勢が張り切っている。 |
4公演の機会があったことも日本のオペラ事情から考えれば幸運なことだ。僕の役音楽教師は、金持ちに買われた公演全体の舞台監督のような役どころで、ぼやきながらも執事に気を使い、舞踏教師と張り合い、プリマドンナとテノールをなだめ、若き弟子の作曲家を勇気付けながらも世渡りを仕込む。早口のドイツ語とヴォータンばりのドラマティックなフレーズが交錯して、声楽的にも演劇的にもまことに楽しい、やり甲斐のある役だ。 演出はここのところ引っ張りだこの岩田達宗。演劇の稽古手法を多用して繊細な芝居を作ってくれた。序幕のすったもんだとコメディー組のどたばた劇に大笑いが起こり、幻想的な照明の美しいアリアドネ・バッカス組のロマンとの間に見事なコントラストが描かれた。 問題はいつもながら、カネだ。なにしろオペラは金食い虫。市の助成があっても四公演の収入では厳しいのだが、幸運なことに多くの近隣企業が応援してくれた。ことに地元のブラザー工業は元ドイツ現地法人社長の長谷川友之氏が本社広報部に戻られて以来、東京二期会・藤原歌劇団・新国立劇場など日本のオペラ公演支援の先陣を切っているが、今企画でも経済面に留まらずマスコミ対応や二ヶ月に及ぶ稽古会場の提供など、格別の御協力を賜った。音楽評論家池田卓夫氏からも「人選・ドイツの劇場指揮者の招聘・企業支援の枠組みなどが成功した好演」と褒めて頂いた。 東京でも事情は同じだが、第九を初めとしてドイツ音楽は非常に愛好されているのに、ドイツオペラはまだまだ浸透していない。今回名古屋に打った「最初の一手」が来年以降も継続するべく取り組みたいし、クリスティアン・ハンマーにはドイツの劇場たたき上げの確かな腕を是非東京でも発揮してもらいたいと願っている。 |