協賛・衣装提供(日向野の結婚)
会場 サントリーホール小ホール
日時 10月26日19時開演
入場券 全席自由 4000円 (7夜通し券・21000円)
お問い合わせ toruweb@tanabe.de までメールでどうぞ
爆笑バラエティーオペラ
「ホテルモーツァルトにようこそ」
(魔笛・ドンジョヴァンニ・コジファントゥッテから抜粋)
「日向野の結婚」
(フィガロの結婚から抜粋)
趣旨
田辺とおる
赤坂のサントリーホールが今年開館20周年を迎えるに当たり、ぼくの所属する声楽家団体・東京二期会との共催で「モーツァルトで二期会週間」という連続演奏会が10月に開かれます(シリーズの詳細は、二期会サイトをご覧下さいhttp://www.nikikai.net/concert/mozart.html)。この中日、第4夜はぼくの企画で、モーツァルトオペラのオムニバスによるパロディーオペラを上演することになりました。
「日向野の結婚」 フィガロの結婚を現代版のパロディーにして、中年の部長夫婦とクラブのホステス・スザンナの人間模様に翻案したコメディー。部下の結婚、部長夫婦の仲人、新婦に色目をつかう部長・・・原作のユーモアはそのまま現代にも通用いたします。携帯電話からエルメスのバーキンまで登場する現代ホームドラマ譜。のコメディ展開のなかにホロりとにじむペーソスも・・・。
「ホテルモーツァルトにようこそ」 魔笛のタミーノ・ドンジョヴァンニのツェルリーナ・コジのドラベッラがホテルモーツァルトで鉢合わせ?二重三重のどたばたラブコメディーをさばくのは、パパゲーノで弁者でレポレッロでジョヴァンニでアルフォンソでもある、支配人。混乱のホテルはやがて天才モーツァルト讃歌に・・・。
という2作品で、前者は昨年、私の自主企画による初演で会場は笑いの渦。後者は今回のサントリーホール公演にむけて書き下ろす新作です。「日向野(ひがの)の結婚」はフィガロの結婚、「ホテル・モーツァルトにようこそ!」は魔笛・ジョバンニ・コジの3曲から、それぞれ楽曲を抜粋して構成し、一晩でモーツァルトの四大オペラをパロディー仕立てで俯瞰します。
オペラのパロディーというのは、ヨーロッパでは歴史的に定着している娯楽ジャンルですが、日本にはまだ浸透していません。19世紀のヨーロッパでは非常にもてはやされました。ワーグナーが大悲劇のタンホイザーやニーベルングの指輪を公開すると、さっそくオペレッタ「タンホイザー」、オペレッタ「愉快なニーベルンゲン」などが出来ています。新作オペラ上演がアクチュアルな社会現象だった時代に、庶民は原作オペラと同様にパロディーも楽しみにしていました。モーツァルトやベートーベンの作品も盛んにパロディー化され、大衆劇場や寄席で公演されました。
翻って、現代の日本はどうでしょう。
音楽劇、ということで考えると、創作ミュージカルが非常に盛んです。全国のスクールコンサート、学校音楽鑑賞会などにもよく取り上げられます。楽しい音楽劇を見たい、という土壌は十分にあるとおもいます。しかし大人の娯楽である、パロディー、それもオペラのパロディーは定着していません。オペラはまだまだ難しいもの、マニアが夢中になるもの、予習しないと観にいけない外国の芸術、という敷居があります。 パロディーは、オペラ聴衆の裾野を広げる可能性を秘めていると思います。誰でも気軽に大笑いできる作品が、オペラへの導入役をはたしてくれます。
今回ご紹介する二作品は、コジのテノールのアリアや魔笛の夜の女王のような難曲は採用していません。大学生のクラブ活動程度でも十分に上演可能でしょう。登場人物もすくないので手軽だと思います。お笑い番組のディレクターと落語好きの僕が組んでいますので、くすぐり所は結構つくるし、かといってモーツァルト作品には敬意をはらって大切にあつかって、という感じです。
フィガロで、スザンナと伯爵の二重唱に「奥様が嗅ぎ薬をほしがっている」とか、隠れデートの返信にピンをさしておくとか、でてきます。モーツァルトの時代には、これがとってもエロチックだったとおもうのです。でも、現代でそれをまともにやっても、「フィガロという古典の筋書きがそうなっている」という以上の情感がつたわりづらい。
ぼくたちのパロディーオペラ「日向野の結婚」では、たとえばピンのかわりに携帯で会話しているレチタティーヴォで、伯爵こと有馬部長は、スザンナからもらったピンクの熊のストラップを携帯につけてよろこんでいたりします。こういうことが、ピンと同じ心理風景の演出なのではないか、とぼくは考えています。
そして、もちろん日本語で、それもオペラ台本の翻訳、という、なかなか面白くなる余地のないものではなくて、翻案したオリジナル台本です。部長夫人に浮気がばれるきっかけは、部長がうっかり落としていたスザンナの名刺をみつけて、それについていた香水が、部長の背広に以前ついていた残り香と同じだったから、というもの。そんな仕掛けをふんだんにいれたものです。
代表的な楽曲を日本語の替え歌に仕立てるます。オペラ観劇が初めての人には、「難しいものではありませんよ」というメッセージを、「通」たちには、「ああ、あの曲がこんなパロディになっている?!」と、「知っているからこそ2倍楽しめる」知的興奮を。そんなエンターテイメントを目指しました。
梗概
制作者の構成
脚本・構成 豊島浩行
小堺一機の「ごきげんよう」(フジ系列)チーフディレクター
演出 加藤裕己 (放送作家)
編曲・音楽構成と主演 田辺とおる
「ホテル・モーツァルトにようこそ!」
ストーリーはモーツァルトを愛し、モーツァルトを尊敬する人のみが泊まれる『ホテル・モーツァルト』の一晩の物語。モーツァルトの時代のホテルを再現し、そのロビーを舞台に、映画「グランド・ホテル」形式に、「魔笛」「ドン・ジョバンニ」「コシ・ファン・トゥッテ」の登場人物達がそのままの役柄で泊まりに来ます。
<登場人物>
ホテル・モーツァルト』支配人・・・田辺とおる
タミーノ王子(『魔笛』より)・・・・・・・・・羽山晃生
ツェルリーナ(『ドン・ジョバンニ』より)・・・・嶋村友美
フェルランドとドラベッラ(『コシ・ファン・トゥッテ』より)
ドラベッラ 小畑朱実・フェランド 羽山晃生
<あらすじ>
「ここはホテルモーツァルト。モーツァルトに関係のある人のみが泊まれる世界にひとつだけのホテル」と字幕が出る中で、魔笛・ジョバンニ・コジの各序曲をメドレーにした序曲が演奏され、開幕。
夜の女王に頼まれて、パパゲーノと一緒にパミーナ救出の旅にでたタミーノがこのホテルに投宿している。ツェルリーナは新婚なのに、ドンジョヴァンニからのラブレターに誘われて夫のマゼットの下から逃げ出してきた。ドラベッラは亭主のフェランドとはもう倦怠期。このホテルに逗留してドンジョヴァンニとのデートを満喫している。
パパゲーノが見当たらないので探しているタミーノは、暗闇でツェルリーナをパハゲーノと間違えてしまう。ツェルリーナは、ひとりになるとジョバンニからのラブレターを取り出して、恋に悩む悲劇のヒロインを演じることに陶酔。そこに、出張が早く終わったけど「トドそっくりに変わり果てて、牛でも食べないほどの料理しか作らない」妻ドラベッラのもとには帰りたくないと、フェランドが投宿。フェランドの泊まる部屋の隣では妻がジョバンニと浮気の真っ最中。
タミーノ・ドラベッラ・ツェルリーナが出会って話していくうちに、ドラベッラもツェルリーナもジョバンニに口説かれたことがわかり大混乱。気まずい雰囲気のところに支配人が手紙を持ってくる。読んでみると.......とまぁ、混乱に次ぐ混乱。でも最後は「ここはホテルモーツァルト。モーツァルトを愛する人しかこない。みんな素敵な者ばかり」とハッピーエンド。
「日向野の結婚」
モーツァルトのフィガロの結婚、というオペラ史上の金字塔は、人間の生き様・喜怒哀楽を鋭くえぐり、上質の音楽というオブラートにくるんで我々に提示してくれます。衣装と舞台を現代にうつし、携帯電話からエルメスのバーキンまで、「今」を象徴するアイテムを駆使して、サラリーマン生活に読み替えてみたところ、違和感のない、ホームドラマコメディーのような喜劇になりました。
○ 2005年9月の初演
掲示板報告は以下にあります。
http://www.yk.rim.or.jp/~hirata/minibbs4/minibbs.cgi?view=106&page=129
公演の案内記事は http://homepage1.nifty.com/opera/2005_0910.htm
○ 2005年初演版
有馬部長&主演: 田辺とおる
部長夫人: 小畑朱実
クラブ「モーツァルト」のホステス(源氏名・スザンナ): 金井奈保子
ピアノ: 川手美保子
《あらすじ》
休日。自宅のソファーで探し物をする有馬部長を夫人が見とがめ、クラブ「モーツァルト」のホステス、スザンナの名刺を発見して部長を詰問する。部長は「部下の日向野(ひがの)君がスザンナと結婚するので仲人を頼まれた」と咄嗟の嘘をつく。断るだろうと思っていた予想に反して「一度やってみたかった」と夫人は大喜び。二人を挨拶に寄越してね、と言い残してイソイソと洋服を選びに行く。
窮地に追い込まれた部長は携帯電話で「出世したけりゃ命令をきけ」と日向野を脅し、スザンナには「エルメスのバーキン買ってあげるから協力してくれ」と頼み込む。
さて、部長の「迷案」の行方や如何に・・・・・
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